常しえの思い 第二話 邂逅

───なんだろう…いつもより次元空間が安定していない?

いつもなら、もうすでに次元を越えて目的地に降りたてているのだが、今回は違った。
「マスター。マナが衰退しているのが影響しているのかもしれません」
ヴァルローダはラトレイアの考えを察し、考えついた事を述べてきた。
でも──…
「でもねぇ…ヴァル。どうやらマナの衰退だけが原因じゃないみたい」
「と、いいますと?」
「ここの次元軸、なぜだか分からないけどずいぶん磁場が安定していないみたい。
どうやら…私達が降りる前にも次元転移があったみたいね」
「次元転移って、頻繁に起こりましたっけ?」
「うーん…どうなんだろう。私達は自分の意思で移動出来るけどねぇ…。
…。マナの波動を辿ってるはずだけど…
無事にユグドラシルの所へ降りられるかしら」
「…おや…?」
───キィィィィ…
「どうやら、出口みたいね」
「そのようです。マスター」
「さあ、行きましょう?」
キィィィィ……イイイイイ───
転移を終え辿り着いた先は空の直中。
遙か下に地上が見え、見たところどうやら眼下は雪原が広がっており。
雪原のそばには半島らしき所に城があるのが見てとれた。

「?!」
「えっ?ちっ、ちょっと…?」
「空…ですね。」
「嘘でしょ?なんて中途半端な…
って、それどころか、ここ、マナがほとんど無い…?!」
上空な上に、マナが薄すぎる。
マーテルさんの所で感じたマナの衰退ぶり以上かもしれない。
まずい…力のバランスがとれない…
「落下…して…いく……」
「?!マスター??」
ああ…なんだか体が重い。力もうまくコントロール出来ない。予想以上のマナの薄さ。
どうにかして、この世界と同調しないと……
空を飛べないのは不便だし。
ラトレイアは遙か上空から下降するがままの状態でそう思案した。

「マスター…??
そうか、マナが薄すぎてまだ世界と同調しきれていないのか?!」

さて。ヴァルローダとラトレイアが上空で苦境に至っているのと同時刻。
目指していた場所の地上では、空の異変を感じ取りにわかに騒がしくなるのであった。

「ねぇ…空から…なんか降ってきてるよ?」
「えー?何それ?」
「なんか…人間っぽいな」
「ゴールドドラゴンも…?あ、なんか人間助けてる?」
「なんか…だんだんこっちに来てないか?」
喧々囂々とざわめく。
「一体どうした?騒がしい。敵兵でも来たのなら討てば良い」
「あ、イーヴルロード様!」
「どうした?ドゥームガード」
「あれをご覧下さい!」
地上でざわめいていた群衆の中へ、役職のあるであろう人物が現れると皆口々に上を見て!!と指し示す。

見れば、ゴールドドラゴンが何かを抱えてこちらへ向かって来ているのが見えた。
その様子はただ事でない事は確かである。
「ダ、ダオス様にご注進を!!」
イーヴルロードは城の中へ戻って行った。

上空から急降下し落下するがままだった主を抱きとめ、ゆっくりと下降し地上に降り立とうとしているのはヴァルローダとラトレイアは、あと少しで地表に到達までに至っていた。
「マスター、大丈夫ですか?」
「うー…しょっぱなから調子狂うなんて…」
「あそこの城、何やら人が集まってます。
とりあえずそこに行きますか?」
「…そうね…。この世界のこと、何か分かるかもしれないし…」
それに…水が無性に飲みたい。
ただひたすらに水が飲みたい。

 その直ぐ側ではその場に集まっていた群衆がざわめいており。
「来たぞ!!」
「なんだろうね。」
「ドラゴンだから、ミッドガルズの兵でも無いだろう」
「あ、やっぱり何か助けたんだ。あれは…?」
「人間…?なのか?」
ふわり…と、城のすぐ側にドラゴンは降り立った。

 どうやら、そこに集まっていたのは魔物や変わった鎧を纏った者、魔法使いのような者など様々な種族のようだ。
「ヴァル、人型になっても大丈夫そうよ?」
ヴァルローダはラトレイアの問い掛けに応え、人型へと姿を変えていった。
それを見た群衆は一斉に距離を取り、警戒心を顕にしどよめきが起こる。

「なんだ、あのドラゴン!」
「人型になるのなんて見たこと無いぞ?」
最大限に警戒したほうがいいのでは?と数歩後退りをするのであった。

「初めまして。私はラトレイアと申します。こちらは私の使い魔のヴァルローダ」
私は彼等に名前を告げた。
彼等からこの世界について何か聞けるかもしれない。
「…ラトレイア…と言ったな。お前はミッドガルズの手の者か?」
「…ミッドガルズ…?って、何ですか?」
…国名…かしら?
状況を測りかねてラトレイアははて?と首を傾げた。

「お前…ミッドガルズを知らぬのか?」
周囲でまたざわめきが起こった。

「知らないも何も…私達今、この世界に来たばかりだし……」
問いただすような口調に困りラトレイアは嘘偽りなく答えれば
「貴殿の名はなんというのだ?」
主をサポートするがのごとくヴァルローダは、その場に集まっている中で役職があるのであろう人物に名を尋ねた。
「…我が種族名はイーヴルロード。個人名はとくに無い」
「イーヴルロード殿、ここは…アセリア暦と呼ばれる世界ですよね?」
「そうだが…。お前達、本当にミッドガルズを知らんのか?」
「知りません。」
やけにその言葉にこだわるな…。彼等とそのミッドガルズは何か因縁があるのかしら。
「私達は…」
さて、どうしたものか。このまま本当のことを言っても大丈夫なのか、世界樹の元に向かうにはどう行動を取るべきかとラトレイアは思案しながら口を開こうとしたところで背後から声がかかる。

「その2人は嘘を言っているようには見えぬぞ、イーヴルロード。」
その声に、またもや周囲がざわめいた。
「ダ、ダオス様?!」
「お出になっては危のうございます!!」
イーヴルロードは驚いてその声の主に向き直った。

 ゆるやかにウェーブのかかった綺麗な長い金の髪。グレーがかかった青い瞳、両の腕には金環を身に付け、金糸で刺繍を施したマントを纏った美しい青年が現れた。
「良いのだ。この者達に敵意は微塵も無い。」
ダオスと呼ばれた青年はそう答えたのだった。
「ダオス様がそうおっしゃるのでしたら…」
そう言って、イーヴルロードはダオスの側に控えた。

「騒がしくしてすまなかったな。非常事態ゆえ皆気が張っていたのだ。」
「いえ…。空から急に来訪者が現れれば誰でも警戒しますもの。」
私が同じ立場であったらやっぱり、何度も同じように尋ねると思う。

「私はダオスという。そなたは?」
「申し遅れました。私はラトレイア。こちらは使い魔のヴァルローダと申します」

 どうやら、周囲の様子から判断すると彼がこの城の主らしい。
この世界について彼に尋ねてみよう。
ラトレイアは現状を即座に分析し、行動を起こすことを決めた。
「ラトレイア。この世界に来たばかり…と聞いたが。」
「はい、その通りです。
マナが急速に失われてゆくのを感じて訪れたのですが…。
…そういえば、この辺りはマナが凄く薄いですね。ユグドラシルはこの近くにあるのではないのですか?」

『マナ』と『ユグドラシル』の言葉を発したら、また周りがざわめいた。
───…まずい事聞いたかしら…
周囲の反応があまり芳しくなかったため、ラトレイアは選択を誤ったか?と表面上には出さずに心のなかで、やってしまった…と天を仰いだ。

「…詳しく話を聞きたい。ラトレイア、城の中へ…。」
ダオスはそういうとラトレイアとヴァルローダを城内へと誘われていくのであった。

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