「……綺麗…」
月明かりに誘われるようにラトレイアはダオスから借りている部屋から抜け出した。
───月影の誘い───
部屋を出て、廊下に備え付けの蝋燭の明かりと時々窓からこぼれる月明かりを頼りに長い廊下を歩き続け、エントランスホールから外へ出る。
ラトレイアは城から少し離れた場所まで歩き、
ふと夜空を見上げると、大きさの異なる2つの月が皓皓とあたりを照らしていた。
青白い月光は雪原を優しく照らしており、その光を受けて雪原も青白く光輝いている。
月から目をそらし空を見れば、雲一つ無い夜空が広がっている。
「……すごい…とても綺麗…」
ラトレイアは時が経つのも忘れて、2つの望月の織り成す素晴らしい風景に見入っていた。
「…素晴らしい明月だな…」
「ダオス様…」
いつの間にか、ラトレイアの背後にダオスが佇んでいた。
「これからお出かけですか?」
「いや…月明かりに誘われて月夜を観賞していた」
「そうなんですか…。
私も、この素敵な景色に見入っていました」
「そうか……」
そう言って、ダオスはラトレイアと同じように夜空を見上げ
──綺麗だな…
と呟いた。
───くしゅんっ!
「…寒いのか?」
「はい、お恥ずかしながら…」
そんなに長い時間を雪原で過ごしていないと思っていたのだけれど、さすがに寒くなってきたのかしら。
そう思った矢先。
暖かい気配がラトレイアを包んでいた。
「…え?」
ラトレイアが驚いていると
「遠慮はいらぬ」
そう言って、ダオスがマントに入れてくれていたのだった。
「はい…。あ、ありがとうございます」
「なに。気にする事はない」
──気にするなと言われましても…なんだか申し訳ない気持ちで胸がいっぱいです。
心の中でラトレイアは呟いた。
携帯サイト初出:2008.9/15 了
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