それは、この一言で始まった。
「Trick or Treat?」
10月31日。
この日は万聖節の前夜という事で、アセリア各地でハロウィンを祝う準備が執り行われていた。
「ハロウィン…ですか?」
ひょんな事からアルヴァニスタまで一緒にクレス一行と旅をする事になったラトレイア達は、この世界にもハロウィンがあることを知った。
ここベネツィアでも例外ではなく、街はハロウィンに備えて家の玄関口に魔除けの焚き火をランタンで焚いていたり、子供達が仮装の準備をしている。
「そう!ハロウィン!
今日は船が出られないっていうし、あたしたちもその間ハロウィンを祝おうよ!」
アーチェはにこやかに、みんなに提案した。
「…まあ、船が出られないのだから仕方ないですよね」
クレスはそう言うと、クラースの方を見た。
「…そうだな。だが、あまり羽目を外すなよ?明後日は船に乗るのだから」
「やったー!そうこなくっちゃ!
じゃ、ミントも準備しよっ!ほらほらほら!」
クラースの許可が出た途端、アーチェはミントを引き連れて街中へと出掛けて行った。
「…素早いですね」
ラトレイアは、アーチェの行動力に呆気にとられていた。
「すまないな、ハロウィンに付き合わせてしまって」
クラースはラトレイアに詫びた。
「え?」
「お前さんも、急ぎの旅だろうに」
「いえ、船が万聖節で出航出来ないのですから仕方ないですよ」
気になさらないで下さい、とラトレイアはにこやかに微笑む。
「でも、ハロウィンで船が出せないのは予想していませんでしたね」
ヴァルローダはしみじみとした面もちで船着き場から船を見上げた。
「仕方ないさ。収穫祭だからな。我々もすっかり忘れていたよ」
そう言いクラースはきびすを返し、船着き場を離れ宿へ戻ろうと歩き出した。
クレスとヴァルローダも船着き場を離れようときびすを返し歩き出す。
「ハロウィン…か」
──確かハロウィンは街に精霊や魔女・家族の先祖が夜、家々に訪れてくるっていうものよね…。
この世界では収穫祭色が強いのね。魔除けの焚き火は焚かれているみたいだけど。
ラトレイアがそう物思いにふけっていると、頭上から
「危ない!よけて!!」
声が降ってきたかと思うと
──ドサドサドサッ!!と、船に積まれていたであろう荷袋が落ちてきた。
「!」
とっさによけたラトレイアだったが、ある荷袋から1つの瓶がこぼれ落ち、今にもラトレイアにぶつかりそうになった。
「あ、危ない!」
クレスが駆け寄ろうとしたのも束の間。
ラトレイアは条件反射で剣を抜き、瓶を一刀両断にしていた。
「あ。…つい…」
瓶を真っ二つにしてしまい、まずい事をしたと思ったラトレイアだったが、瓶にはぶつからなかったものの時すでに遅く、頭から瓶の中身をかぶってしまっていた。
「本当にすみません、お怪我はありませんか?」
荷崩れを起こした船の甲板員なのであろう、水夫が船から降りてきた。
「あ、はい、ケガは無いです」
ラトレイアは水夫にそう答えると
「それより、すみません。瓶を1本切ってしまって…。弁償させていただきますね」
ずぶ濡れになりながらも水夫に詫びた。
「いえ、こちらこそ荷崩れを起こしてすみませんでした。
こちらの不手際ですので瓶のお代は結構ですよ」
慌ただしく荷物をまとめ上げ、水夫は弁償を申し出たラトレイアに深謝を述べ、さらにお詫びとして「宿代に用立てて下さい」と代金を渡して船へと戻って行った。
「それにしても、よくあれだけの荷物をよけたものだな」
クラースはラトレイアの反射神経の鋭さに目を見張った。
「僕の出る幕無かったですよ…本当、ラトレイアの反射神経って凄いですね。
…ところで、瓶の中身は何だったんですかね?」
クレスは、真っ二つになった瓶を手に取った。
ラベルをみると、それには『ルーンボトル』と書かれていた。
「ん?どうしたクレス」
瓶のラベルを見て動きが止まったクレスを見てクラースは手元を覗きこんだ。
そしてクレス同様、クラースも表情を強ばらせた。
──ルーンボトル
魔力付与の瓶。不確定アイテムの鑑定に使用したり一部のアイテムを別のアイテムに変化させる事もある。
備考。
ベネツィアでは販売していないアイテムである。
(西の孤島デミテルの館内にいるモンスターが時々落としていく、割と貴重なアイテムである)
「……」
「…だ、大丈夫ですよね。人が変化したりは」
しないですよね?とクレスが話そうとしたのを遮るように
「うわっ!?」
ヴァルローダが驚きの声をあげた。
「どうした?」
クラースは慌てて後方を振り返ると、『ポンッ』と、アイテムを鑑定した時のような煙が上がっていた。
煙がおさまるとそこに現れたのは…
「…?な、こりぇは?」
驚きで目を白黒させながらもラトレイアは何が起こったのか状況を把握しようとあたりを見回した。
周りがやけに大きくなったように見える。
「…?」
見れば、ヴァルローダは顔面蒼白でうろたえている。
何が起こったのかと思い、海の水面を見ると…
「…えー!?」
そう、そこには子供ぐらいの大きさになっていたラトレイアが映っていたのである。
「なっ、なじぇこんな」
いきなりの出来事にラトレイアは水面に映る自分を確かめるかのように身振り手振りを繰り返した。
「と、とにかく人目をひくと厄介ですから宿へ向かいましょう!」
ヴァルローダはラトレイアを抱きかかえると慌てて宿屋へと走って行った。
「我々も急ごう」
「はい!」
クラースとクレスも、後を追うように宿屋へと走って行った。
「…つまり、ルーンボトルの中身を頭からかぶったために服ごと子供化してしまった…という事ですか?」
ベネツィア唯一の宿屋の中。
ヴァルローダはルーンボトルの効能などをクラースから教わり、なぜラトレイアが小さくなったかを知った。
「ああ、考えられるのはそれしかないな」
クラースも、信じられないがそれしかないと説明を終えた。
「うう…やはり瓶を切ったのは早計でちたね」
とっさの出来事だったとはいえ、剣で瓶を真っ二つにして結果的にこの事態を引き起こしてしまった事にラトレイアはうなだれた。
「ましゃか、こんな事になりゅなんて…」
「…口調もすっかり舌足らずに…」
まさかの事態にヴァルローダは、この状況で何も出来ない自分が不甲斐なくて唇を噛み締めた。
「一体どうしたら元に戻れりゅんでしょうか?」
時間が経てば効力も消えるものなのか気になったラトレイアは解決策を見いだすために質問をした。
するとそこへ
「たっだいまー!見て見て!衣装借りちゃった!
…あれ、みんなどうしたの?」
ハロウィンの仮装用に衣装を借りたアーチェが宿に戻って来た。
「…あら?ラトレイアさんは…?」
アーチェに続くように戻って来たミントは、1人足りない事に気付き室内を見渡した。
その様子を見て、これは厄介な事になったなとクラースは肩をすくめ、クレスはどう説明したら良いか悩んだ。
「あの…わたちはここです」
ラトレイアはおずおずと手を上げた。
「…え?え?何がどーなっちゃってるのこれ?」
アーチェは、目の前にいるラトレイアの姿に目を白黒させた。
「一体何があったんですか?」
異常事態にミントも驚き、事情を知っているであろうクレス・クラース・ヴァルローダを見渡した。
「実は─…」
ヴァルローダは、今までのいきさつを2人にかいつまんで説明した。
「そんな事があったんだ…」
事の顛末を聞いたアーチェは、ラトレイアを膝に乗せて抱きかかえ
「もう日も暮れだしてきたけど…これからどうするの?」
どうしたらラトレイアが元に戻れるか探すため、クラースに訊ねた。
「どうする、と言ってもだなあ…」
たずねられたクラースは妙案が浮かばず悩んでいると
「…この瓶の効果はいちじてきなものなんでしゅか?」
ラトレイアは先ほどから気になっていた事を質問した。
「いや、一度アイテム鑑定に使ったものは、変化後もそのままの状態を保っているから…」
「一時的な効果ではないですよね」
「うん、そだね…」
ラトレイアの質問にバツが悪そうにクラース・クレス・アーチェは答えた。
「そ、そうなんでしゅか…」
思いのほか状況は悪いのだと知ったラトレイアはさらにうなだれた。
ヴァルローダはますますうろたえている。
「でも、アイテム変化したものにかけると元のアイテムに戻るものもありますよね」
クレスが思い出したように呟いた。
「だが、アイテムの時のようにうまくいくとも限らん」
「そうだよ、もし失敗したら…」
クラースの制止にアーチェも同意し、クレスを見た。
「そうだよね、ごめん…」
軽率な発言だったとクレスは謝った。
「あ、そうだ!ミントの法術は?」
アーチェは状態変化の治療術のある法術を思い出してミントに訊ねた。
「そうですね…私が今使える術で戻れると良いのですけれど…」
やってみる価値はありますね、とミントは意識を集中させた。
「アンチドート!」
祈りを捧げて法術を発動させミントはラトレイアに術をかけた。
ヴァルローダは祈るような面もちで様子を伺った。
だが、しばらく様子を見守ってみても特に変化は見られ無かった。
「…うーん、やっぱり解毒の術では解けないか…」
毒と呪いじゃやっぱり原理が違うからか…と、アーチェはますます悩んでしまった。
「すみましぇんみなさん。わたちがいたらないばかりにめいわくをかけてしまって…」
申し訳なさそうにラトレイアはアーチェの膝から降りると
「すみましぇん、ちょっと外の風にあたって頭を冷やしてきます」
そう言って部屋から出ようとした。
「え?今から?暗くなる時間だから危ないよ!」
アーチェは外出しようとするラトレイアを慌てて止めに入った。
「え?なじぇですか?」
キョトンとした面もちでラトレイアは振り返った。
「そりゃ、夕暮れ時に小さな子が1人で外にいたら危ないじゃん!今は何があるか分からないご時世だもの!」
「浚われたりでもしたら!」
口々にアーチェとクレスは止めに入った。
「そうでしゅか?そんな事はないと思いましゅが…」
「そうですよ!外出するならせめて私もご一緒させて下さい」
皆の言う事も一理あるとヴァルローダも止めに入った。
「わかった。じゃ、ヴァルも行こう!」
そう言うとラトレイアはヴァルローダの手をひいて外へと出掛けて行ってしまった。
「それで…これからどこへ行くんですか?マスター」
手をひかれ外に出たヴァルローダはラトレイアの意図をはかりかねて訊ねた。
「ん…。人目のつかない所で、元にもどりゅための実験をしようと思って。
まじゅは、道具屋で買い物」
そう言うとラトレイアは道具屋を目指して歩き出した。
道具屋でパナシーアボトルを数本買ったあと、ラトレイア達はベネツィアを出た。
「人目のつかない所…街の外ですか?」
ヴァルローダは疑問に思いラトレイアを見やった。
「ん?ちがうよ?これから精霊の森にいくの」
「精霊の森ですか?街から離れると皆さん心配しますよ?」
「そりぇはそうなんだけど…精霊の森はマナに満ちているから」
マナの消費を最小限に留めて元に戻りたいからと話しながら歩き出したラトレイアの提案に納得したヴァルローダは
「分かりました。あまり長時間外出するのも皆さんに悪いので、空を渡りましょう。しっかり捕まって下さい」
そう言うとラトレイアを抱きかかえ、途中眼下に見える町には目もくれず、高高度を急行軍で精霊の森を目指した。
精霊の森へ辿り着いたラトレイア達は森の最奥にある大樹のもとへやってくると、ルーンボトルの効果解除作業に取り掛かった。
パナシーアボトルを使って幾つか自分で使える解呪を試してみたものの、どれも効果を解除するにはいたらず、買ってきたパナシーアボトルも底をついてしまっていた。
「…うう。ましゃかここまで手強いとは…」
これまでの解除実験で多少マナを消費したラトレイアは少しぐったりとした様子で大樹の根元に寄り添った。
ヴァルローダはパナシーアボトルを買い足しに近くの村まで出掛けている。
さすがに万策尽きたかと思うとラトレイアは妙に寂しくなって、大樹の根元に横になると目を閉じた。
「…このまま元にもどりぇなかったらどうしよう…」
不安が脳裏をよぎり、ラトレイアは涙が止まらなかった。
「…うっ…ひっく…」
ヴァルローダが戻って来るまでには気を落ち着かせようと試みるも、一度涙をこぼしてしまうとなかなか感情をコントロール出来なくなり、一向に涙が止まらなかった。
そこへ…
「そこに居るのは誰だ」
聞き覚えのある声を聞き、ラトレイアは起きあがると声の主の方を振り返った。
「…ダオスさま…?」
どうしてここに?とラトレイアは驚きを隠せないでいた。
「…君は…ラトレイアか?」
ダオスも、子供姿のラトレイアに驚きを隠せないでいた。
「はい…」
「その姿は一体どうしたのだ?」
ダオスは、泣いていた相手がラトレイアと分かるとあたりにしいていた警戒を解くとラトレイアを抱きかかえて大樹の根元に腰掛けた。
「う…えと…ちゅいうっかりルーンボトルをかぶってしまって…」
ラトレイアはこの姿に至った経緯をかいつまんで説明した。
「そりぇで、解呪をここりょみたんですが…
どりぇもうまくいかなくて…」
この世界の法則にのっとった解呪でないと効果がないみたいで、これからどうしようかと…と話し終えるとラトレイアは悲しくなって俯いてしまった。
ラトレイアの目尻に涙が滲むと、ダオスは優しく涙をぬぐい取り、幼子をあやすかのように優しく頭を撫でた。
涙をぬぐわれたことに驚いたラトレイアは顔を上げ、目をしばたたかせた。
「そういえば、ダオスさまはなじぇここに?」
「大樹の元で奇妙な力を感じたのでな。何かあったのかと思い、こうして駆け付けたのだ」
そして、駆け付けてみると、大樹の元で泣いている君を見つけたのだ…
そう言ってダオスは優しくラトレイアの頭を撫でた。
「奇妙な力…。すみましぇん、それはたぶんわたちの解呪呪文ですね」
そう言うと申し訳なさそうにラトレイアは俯いた。
「気に病む事など無い。
こうして、君の非常事態にそばにいる事が出来たのだから…」
そう言い、ダオスはラトレイアを安心させるかのように抱きしめ、優しく背中をさすった。
するとそこに
「…マスター!遅くなってすみません」
ガサガサと茂みを掻き分けてヴァルローダが戻って来た。
「近くの村で朗報を掴みましたよ!
…あれ、ダオス様?」
村に買い出しに行っていたヴァルローダは、目前にダオスが居ることに驚いて目を瞬かせた。
「あ、ヴァルおかえり!」
ラトレイアはヴァルローダのもとに駆け寄ると労いの言葉をかけ、ヴァルローダはそれに応えると、疑問に思った事を口にした。
「えとね、そりぇは」
「私の事は気にせずとも良い。ところで、朗報とは?」
ラトレイアが状況説明をしようと口を開いた直後、ダオスはそれを遮るようにヴァルローダに問うた。
ラトレイアの子供姿を目の当たりにしているダオスを見て、詳しい説明はすんでいるのだろうと判断しヴァルローダは話を進める事にした。
「はい、実は近くの村でパナシーアボトルを買い足しに行っている途中、状態異常の治療に詳しい方と出会いまして」
そう言うとヴァルローダはメモ紙を取り出した。
「その方に聞いた所によると、ルーンボトルを誤ってかぶってしまった時の対処法があるらしく、この紙に書いてもらってきました。
これでマスターも元の姿に戻れる筈です!」
「そうなの?」
ラトレイアは表情を明るくし、ありがとうとお礼を述べると早速メモ紙を受け取った。
「…ふむふむ。なりゅほど…。この呪文を唱えりぇば解呪出来りゅのね」
―ルーンボトルはもともと、1本3500ガルドもする割と高価な魔法アイテム。予備もあまり蓄えられない点を考慮すると、ルーンボトルをもう一度かぶるよりもこの方法が効果的である─
と、そのメモ紙には書かれていた。
「うん、わかった。早速やってみりゅ」
そう言うとラトレイアは、独自の解呪で消耗した魔力を回復させるため回復薬のオレンジグミを1個食べたあと、メモに書かれていた法則にのっとり呪文を唱えた。
「聖なる癒やしの御手よ…母なる大地の息吹きよ…
その尊き力、呪に戒められし子らに祝福を与えよ…
ディスペル!」
大地に祈りを捧げ、呪いを唱え力ある言葉を皮切りに癒やしの術が発動した。
すると、呪いのかかっていたラトレイアに癒やしの力が作用し、『ポンッ』と、ルーンボトルで変化した時のような煙が立ち込めた。
そして、煙が収まりそこに姿を現したのは…
「…やっと元に戻れた…!」
一度で術を成功させた、元の姿に戻ったラトレイアであった。
「やりましたね!マスター!」
ようやく元に戻れたラトレイアを見てヴァルローダは安堵のため息をついた。
「これで、変な輩に狙われないですみますね」
変な奴に浚われでもしないかとヒヤヒヤしましたよ─と一人ごちるヴァルローダにダオスは
──至極最もな事だな。
心の中でヴァルローダに同意した。
「…元に戻れて良かったな…ラトレイア」
ダオスはラトレイアを優しく見つめ、労いの言葉をかけた。
「はい!お騒がせして本当に申し訳ありません」
ラトレイアはダオスの心からの恩情に深く感謝し、先ほどまでの無礼を詫びた。
「謝ることなど何も無い。こうして君の無事を確認出来たのだから」
そう言うとダオスはラトレイアの手を引き抱きしめると、ヴァルローダには聞き取れないくらいの小さな声で
「普段は見ることの出来ない君の姿も見ることができた」
愛おしむかのようにラトレイアの耳元で囁いた。
「!」
耳元で囁かれたラトレイアは恥ずかしさのあまり頬を赤らめた。
その表情はヴァルローダの位置からは伺い知ることが出来なかったが、2人の様子を見て何かを察し、気を利かせて2人に背を向けた。
しばらくしてダオスは腕を解くと
「このまま共に帰ろう…と言ったら君は困るだろうか」
名残惜しそうにラトレイアを見つめた。
「え?」
「近いうちに、戦争が起こるやもしれぬ。
戦渦に巻き込まれぬうちに…」
ダオスはラトレイアの身を案じ、共に城へ戻らぬかと手を差し伸べた。
ラトレイアはダオスの心遣いがとても嬉しかったが、少し考えたのち
「勿体無いお言葉ありがとうございます。
ですが、今しばらく旅を続けさせて頂いても宜しいでしょうか?」
旅の目的をまだ果たしていないため、もう少し続けたいとダオスに申し出た。
「ほう…?」
ダオスはその言葉に興味を持ち、話の続きを促した。
「実は、大樹以外にも気になる事がありまして…。
マナ枯渇を防ぐ一手に繋がればと思いまして…。
それを調べとうございます。」
調査が終わり次第すぐ戻りますので…
申し訳なさそうに語り、お許し願えませんでしょうか?とラトレイアは深々と頭を下げた。
「もちろん、戦渦には十分気を付けますので」
ヴァルローダも深々と頭を下げた。
「…君にそこまで頼まれたのであっては、このまま連れ帰る訳にもいくまい。
分かった。…くれぐれも気を付けて…」
ダオスはラトレイアの願いを聞き入れると優しく微笑んだ。
「ありがとうございます…」
ラトレイアは嬉しくなってダオスに感謝の意を込めてひざまずいて頭をたれた。
「ラトレイア…」
ひざまずいたラトレイアを呼び、ダオスは立ち上がるようにと手を差し伸べた。
「はい」
ラトレイアはダオスの手を取ると立ち上がり、2人はしばらくの間、互いの無事を願い大樹に寄り添った。
「クレス!ラトレイアいた?」
──ベネツィア。
日も暮れかれこれ3時間は経ち、いくらなんでも戻って来るのが遅いだろうと、クレス・クラース・アーチェはラトレイア達を探していた。
ミントは、入れ違いになった時を考慮して宿で待機している。
「いや、港側には居なかったよ」
「ああ、道具屋側にも居なかった」
港と道具屋・商店側を探していたクレスとクラースは戻ってくるなりそう答えた。
「んもう、どこに行ったんだろう。広場側にも居ないし…」
アーチェは、あのとき強く止めていれば…とはがみした。
すると
「………おーい!」
遠くで声がした。
「!」
声のする方を振り向けば、街の入り口から元の姿に戻れた状態のラトレイア達が駆けて来るのが見えたのだった。
「ラトレイア!」
アーチェは息急き切ってラトレイア達を迎えた。
「もーっ!どこに行ってたの?スッゴく心配したんだからね!」
バカバカバカ!と、ラトレイアに抱きつくとポカポカと胸元を軽く叩いた。
「す、すみません…。ルーンボトルの効果を解呪するのに時間がかかってしまって…」
ラトレイアは心底申し訳なさそうに皆に謝った。
「…解呪出来たのか…」
クラースは感心するようにラトレイア達を見た。
「はい、運良く状態異常の治療に詳しい方に出会いまして」
人目につかない場所で教わった通りに解呪したら解けました、とヴァルローダは報告した。
「やれやれ…とにかく、一件落着といった所か」
そう言うとクラースは「宿に戻るぞ」と皆を促し、みんな揃ってミントの待つ宿へと戻って行った。
「今日は凄いハロウィンだったね」
「はい、まるで聖霊や魔女の悪戯にでもかかった気分でした」
悪戯は懲り懲りです…
宿に戻る道すがら、アーチェとラトレイアはそんな会話を交わしたのだった。
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