私とヴァルは、城の中にある一室に通された。
~a priori~
ダオスという青年に城の中へ招かれた私達は、城門から入ってすぐのエントランスホールを経て広い城内を歩き、長い階段を3度程登り、広間のような一室へと案内された。
その部屋は、大人数で会議が出来そうな程の広さで、大きなテーブルがあった。
雰囲気から察するに、会議室なのだろう…。
この世界の事をまだ全く知らない私だけど、ここへ来た経緯をうまく説明出来るかしら…。
「さて…」
ダオスは、上座に席をとり確認するような感じで話をきり出した。
「ラトレイア…。貴女はこの世界に来たばかり…だったな。」
「はい、その通りです。」
「マナと大樹の事を知っているという事は貴女もデリス=カーラーンから来たのか?」
疑問を抱いた表情を浮かべ私に質問した。
デリス=カーラーン…?この世界とはまた別の名前…だろうか?
「いえ、私達は『フェアガンゲンハイト』という世界から来ました。」
「そうか…。カーラーンでは無いのか…。」
そうだな…。我が母星からなどあるわけがないな…。
少し寂しそうな、そして悲しそうな……そんな面もちで呟いた。
なぜだろう……。とても儚く見える。
ラトレイアは、差し出されたお水を飲みながらそう思った。
「ラトレイア…
貴女はなぜマナや大樹の事を…?貴女の居た所にも存在するのか…?」
「……大樹…の存在は……。
ですが、我々の世界にも魔術はありますし…自然にもマナは多少なりとも不可欠な力です。
こちらの世界樹の事は、ほんの少しだけですが知っています。」
ここの世界樹自体はまだ見ていないけれど、世界樹に宿るマーテルさんには会ったし…。
フェアガンゲンハイトでの大樹の存在については…伏せた。
質問の答えになってない…かな。…なってない…よね。説明って難しい。
そういえば、ここは世界樹から近いのだろうか?マナが失われていっている現状を探るにも、場所が分からないと…。
「あの…ここは、ユグドラシルのある場所から近いのでしょうか?」
近くてこのマナの濃度だと一刻の猶予も無いはず。
私は思い切って質問した。
「…………ここからは遠い所にある。
あるにはあるが………。」
沈痛な面もちで語った。
「そうなんですか……。ユグドラシルを目指して転移してきたのですが…」
大樹から遠い遙か上空に転移してしまった挙げ句に力をコントロール出来ない状態に陥り飛行不能になった……のよね。
「貴女はなぜ大樹を目指していたのだ?マナが急速に失われつつある大樹は今……………」
そう言った彼は、とてもつらそうな面もちをしていた。
そんなにも状況は悪いのだろうか。
「ええと…それはですね…。
マナが急速に失われてゆくのを感じたので…その原因を調べるために来たんです…。
そのために、まずは大樹の様子をみないと…と思いまして目指していたのですが…。」
初対面で詳しいいきさつをすべて言うかどうか迷ったラトレイアであったが、彼が大樹を凄く案じている事が分かってきたので目的について述べた。
「そうか…。」
一通りの説明を聞いて、ダオスは呟いた。
「ラトレイア、大樹については私が話すよりも実際に目で見た方が状況がよく分かるだろう。
後日、私が案内しよう。」
ダオスのその一言を聞きラトレイアは数秒間フリーズした。
ん?…今、なんて?なんと言われたのか?
『案内しよう』って言った……?
「え?そ、そんな、いいんですか?ご迷惑じゃ…」
「なに、構わない。私も大樹の様子を定期的に見に行っているのでな。」
[それに、君達はこの世界に来たばかりだから地図を頼りに行っても大変だろう。]
ここはダオス様にまかせなさいというように、部屋の中で今までの会話を聞いていたイーヴルロード達が言った。
それは確かに一理ある……。
あるけど…う~ん……
しばし悩みラトレイアは、申し訳無さを感じながらも提案を受け入れることを決め。
「…では、宜しくお願いします。」
「ああ。
転移したてで尚且つマナが薄い所に来たのだ、疲れているだろう…しばらくは城の中でゆっくりするといい。
その間にこの世界の事を知るといいだろう。
好きなだけ滞在しなさい。」
この発言にはとても驚いたラトレイアであった。
───す、好きなだけ?!
この提案にヴァルも言葉には出さないがびっくりしていた。
そして、イーヴルロード達も主の思いがけない言葉に驚くことしか出いなかったのだった。
「この2部屋を使うといい。」
ラトレイアとヴァルローダは城の中を一通り紹介してもらい、客室へと案内してもらっていて、ちょうど隣同士に配置されている部屋に通された。
ラトレイアとヴァルローダそれぞれに1室ずつ貸し与えられる事になり。
「あの…2部屋もいいんですか?なんだか申し訳ないです…」
私はダオスに感懐を述べた。
「他の部屋は皆大部屋か倉庫のような部屋でな。
大部屋はイーヴルロードやそれぞれ種族ごとの振り分けになっている。
大部屋ではゆっくり出来ないだろう…。
この2部屋は窓からの眺めも良い。」
確かに、窓からは雪原が良く見える。
「この部屋のあるフロアにはソーサリスやドゥームガード達の部屋もある。上のフロアにはイーヴルロード達の部屋もある。」
[分からない事があれば我々に聞くといい。]
[マナや大樹の事は分からないけど、アセリアについてなら教えてあげる。]
このフロアで暮らしている人々が周りに集まっていた。
異世界に来て、初対面でまだお互いの事が良く分かっていないというのに、こんなにも暖かい心遣いをうけるなんて…。
「本当に有難う御座います、ダオス様。
皆様、どうぞよろしくお願いいたします。」
私達は感謝を述べた。
「ラトレイア、私は明後日に大樹を視察に行く予定でいる。」
「では明後日、お供させて頂きますね。」
「ああ。それまでくつろいでいるといい。」
ではな…。
そう言って、ダオス様は部屋をあとにした。
皆も、仕事があるみたいで持ち場に戻って行った。
こうして、私達は城に滞在することになった。
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