常しえの思い 第一話 すべての始まり

───マナが…失われていく……
私にはどうする事も出来ないの…?

大樹に宿る者…精霊マーテルは嘆いていた。

───今までこんな事は無かった…。
たとえ魔術が使用されていても、枯渇していく事は無かったのに…

『…ナが…失わ……何か……?』

どこからか声が聞こえる。
マーテルは自分の居る空間を見渡した。

「どなたですか?」

───キィィィィ………ィ
問い掛けに応えるように次元転移が起こり、マーテルに問いかけた声の主が姿を現した。
黄金色に輝く竜を連れた若い女性だった。

『ここは…?』
「ここは、アセリア暦と呼ばれる時間軸の世界です。」
マーテルは答えた。
『アセリア… 』
「はい。……あなたは別の世界の方ですね?」
『ええ。私の居た世界は【フェアガンゲンハイト】。
 …自己紹介が遅れましたね。私はラトレイア。マナの力が急速に失われているのを感じ、様子を見に来たのですが…』
「ラトレイア…。私は大樹ユグドラシルに宿るマーテルと申します。」
『ユグドラシル…。マナを生み出す聖なる大樹。
そして、フェアガンゲンハイトにもマナは多少なりとも不可欠な力…。』
「そして、この地球では魔術の源、私たち精霊の源…。
ラトレイアは精霊では…」
『そうですね。私は精霊ではありません。』
彼女はそう言った。
精霊とは別の存在…。
『マーテルさん。…なぜマナが急速に失われていっているのでしょう?』
「残念ながら…私にも分からないのです。
地上に出ようにも、ユグドラシルから離れる事も叶わぬ身…調べようが無くて…」
だからこんなにもつらいのです…。
私はこの場から動く事が出来ない…。
『もしよろしければ…』
「?」
『もしよろしければ、私が地上に降りて調べてみましょうか?』
ラトレイアは動けぬ私に代わって調べてくれるという…。

でも……
「ですが…マナが失われてゆく今、貴女も満足に力が使えないかもしれませんし…危険です。」
私達精霊が長く地上に出られないのと同じように、世界のパワーバランスが歪んでいる今、地上のどこに降りたてるかも分からない。
『それは充分理解しているつもりです。
ですが、それ以上にこの世界の行く末が気になるのです。』
ラトレイアのこの思いを無にすることは私には出来ない。
「……分かりました。では、お願いいたします。」
『マーテルさん、ありがとうございます。』
「いいえ…。私の方こそ、ありがとう…。
マナが失われゆく今、貴女本来の力の10分の1ぐらいしか発揮出来ないかもしれません。
くれぐれもお気をつけて…。」
『分かりました。ユグドラシルにも大きな負担をかけないように気をつけます。』
では……………

───キィィィィ……
ラトレイアは、共を連れて、地上へと旅立っていった。

「…頼みましたよ……ラトレイア。
 くれぐれも、お気をつけて……。」

携帯サイト初出:2006.09/30 了

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