第一話 全ての始まり

 私は…一体何のために生まれてきたのか。
私は…私は…私は…何者?

 そう…だ…。私は、本来いた世界では、世界の意思を汲み取る代行者だった。
代替わりしたんだ。あの人から。
己が世界を知れと、修行の旅にも出された。
その旅で世界を隈なく巡って…。そして、主神の元に戻った。
戻ったまでは良かった。

 一族が…神々と魔族、果ては人間からも攻め入れられ…
幼馴染や巫女、主神の元で暮らしていた者たちは全て息絶えていて。

亡骸を見た私は半狂乱になったのをうっすらと記憶している。

 主が私に何事か問いかけているのも耳に入らないほど。
「なんで…?なんで…?なぜ?なぜ?なんでよおおおっ!!」
世界を見て回った。人間は愚かだった。いつも争いは絶えない。
かといって、では、神々はどうだ?

いま、こうして。中立の立場を未来永劫貫くと定めた私達一族を滅ぼしている。
大義名分など聴きたくもない。
何が…何が…何が…何が『神々にいつ反旗を翻すか分からぬ』だ!!

今までずっと…そう、数千年、変わらず、神々と魔族との狭間で中立の立場をとっていたではないか!!
それを…なにが…反旗を翻すだと…

 まだ魔族の方の理由の方が単純明快で理解できる。
要は、私たち一族が邪魔だから。

神々のくだらない大義よりもはるかにマシだ。

 そう考えていた時
「まだ生き残りがいたのか。丁度いい…お前も死ね…!!」
背後から何者からの殺気が感じられ。

敵影を見て、身なりから神族であることが見受けられた。残党狩りか。
私は憎悪を抑える事が出来なくなり。

「貴様こそ…!!貴様こそ滅べばいい!!!よくも……!!!」
狂気をはらんだ叫び声とともに、集まりだしていた神々を一人残らず屠っていた。
溢れ出る憎悪感に呼応し、内包する膨大な負の力を解き放って敵を殲滅していた。

 先ほどまでその場にいた夥しい数の神々の居た辺りは一面、焦土と化し。
「あーっはははっ!!いい気味だ!!我が恨み、思いしれ!!」
狂っていく感情を感じながら私は声高らかに笑い続けていた。

 世界は…この世界は私に何を望んでいるのだろう。そう感じながら。

一頻り嘲笑い、気付いた。
いつの間にか自分は泣いていたのだ。

 全てを失ったようなものだ。仕方ないと言えば仕方ない。
そんな時だった。
「…オマエは世界をどうしたい…?」
聞き覚えのある声が聞こえたのは。
「…我等が主…」
「……世界は。何を望んでいる?」
「………」
「この世界を巡って、思う所もあるだろうが…オマエは私の後継者。
…この世界の望みを叶えるか…?」
「……それが、私の宿命なれば。
『世界』は、滅びを望んでいます」
「……」
「だから…滅ぼします…全て」
「そうか…」
主が、満足そうに笑んだのを感じながら、私は…『世界』の望むままに
力を開放し…全てを一瞬にして無へと帰した。

 無になったその空間は亜空間となり。新たな世界が作られることになった。
主と、私の使い魔達、そして、私。

それだけが存在する世界。これから新たに生命が世界自身の力で育まれることになるらしい。
私達はそれを手助けする…そういう形になるようだ。代替わりしたばかりでそれはちと荷が重い気もする。
主もサポートはしてくれるらしいが、正直不安ではある。
「…人間も神も嫌いなのですが…。新世界にも…必要ですよね…?」
「…ふむ。均衡を保つにはな…」
「………」
「…では、こうしようではないか」
ふと、彼は思いを口にしだした。

「他の世界をも巡り、人とは何か、神とは何か…。
様々な世界で見聞を広めるのだ」
と。
これには、人間や神へのトラウマを和らげる目的もあるらしい。が。
正直な話、気乗りはしない。

どうせ、どこの世界でも同じなのだろう。という思いがあるから。
現に、異空間では幾千幾万…無数にある世界の栄枯衰勢が感じられる。
その分、新たな世界も生まれてはいるのであろうが。

「生まれたてのこの新世界にはまだ命が生まれるには時がかかる。
その間に、見聞をさらに広めてきなさい」
さらりと、満面の笑みで。彼はいきなり私をどこかの世界へと飛ばしたのだった。

移転前初出:2014年11月29日

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